派遣の製造業分野への規制について

いつも、EU労働法政策雑記帳を読んでいるので、分野で派遣の規制とかおかしくね?と思っていたのだけど、今日ふっとその意味するところに気がついた気がしたのでエントリにしてみる。

製造業分野への規制、って、労働者保護とかとは全然関係無くて、傾向的に適していない分野を規制することに意味があるんじゃなかろうか。大雑把すぎる言い方だけど、製造現場って熟練度が重要だから、いついなくなるか分からない派遣型は両刃の剣なのに、つい手を出してしまう企業が多いからそうさせないようにするために規制するんじゃなかろうか。

ようするに、経営者の愚行権の規制という性格を持った政策なんじゃないかと思った次第。

そういうことならそれはそれでしてもらって構わないけど、やっぱり登録型派遣の禁止や、短期契約の繰り返しの規制や、保険加入義務、訓練義務といった規制もしっかりやってほしいものだ。その上でオランダモデルの日本版ができないか模索してほしいと思う。

まぁ、このエントリで、1月に既に

製造業派遣禁止などという悪しきギョーカイ主義に振り回されるロスタイムが少なく済みそうなことは望ましい限りです。

という見通しが書かれていたし、冗談のような奇妙な規制だけでお茶を濁されることは回避できたようではあるけど。


参考:リコーやトヨタ系、製造派遣を原則ゼロ 直接雇用にシフト

政府による弱者救済の忌避、の話のつづき

昨日の非常に読みづらいエントリを読んでくださった方がいたようで、トラックバックをいただいた。が、なんとなく引用部分の使われ方に違和感があった。
なぜだろうと思って、自分の書いたエントリをよく読んでみると、思いっきり説明部分が抜けていた。引用部分

[[このブログでは、すなふきんさんの議論を受けているのだが「不正受給」が少なくないと、内心に照らして理解するという文章が出てくる。このフリーライダー忌避理論にこのところよくお目にかかる。]]

の斜体字部分、「不正受給」が少なくないと、内心に照らして理解、なのだが、この段落ではもともと「不正受給」に、
直接受給する行為の他に、公共事業だの助成金漬け企業だのの権益のおこぼれに与る行為を含めようとしていて、かぎかっこが付いているのもそのつもりで書いていたからだったのだが、いま読み返すといかにも苦しい。まったく奇を衒おうとしすぎである。ただ、そこで言おうとしていたのは、

フリーライダー忌避をしている層が、実は結構おこぼれに与っていて、それゆえに、よりはっきりと税金の使われ方としてリーズナブルでないと確信しているのではないか

ということだ。
また、ついでに説明を加えるなら、おこぼれに与っているにもかかわらず予算の額を多く欲しくない理由は、その割り当てが十分でないと思っているからだろう。

このへんの事情は中国や韓国に通じるところがあるんじゃないかと思っている。



トラックバックをもらった相手のブログはかなりリスペクトしているところなのだが、引用したエントリのラストの「ゴドーを待ちながら」は無いんじゃないかと思わざるを得ない。来ない話のタイトルを出してどうするよ・・・。

日本において自由競争によってもたらされるもの

不可解な日本の世論」ということで

今の日本では市場経済によって人々の生活がよくなるという意識が乏しい。そしてなぜか国が貧しい人の面倒を見ることも望ましくないといった考え方の人が多いらしい。こうした発想はどこから来るんだろうか?考えてみたけどどうもよくわからない。

という話を読んだのでエントリかいてみた。

まず、市場経済による生活向上に期待しがたい背景としては、

  1. 競争が激化するとほぼ価格によってのみ勝負が決まる
  2. そのことを購入側も供給側も学習済みである
  3. しかし、コスト削減は主に労働単価の定価か品質低下を原資としているため結局労働者=最終製品消費者層が余計に負担を負う形になる。*1
  4. 一方、品質向上は供給側の中の人の自己犠牲によって達成されるしかなく、経営者層もそれを期待しており、ある意味甘えている構図である(経営者が、ではなく社会全体が)。*2
  5. 結果、消費者利益と供給側利益が両立するのは、新分野が開拓された直後(競争が激しくないとき)のみで、あとは双方ともに満足しがたい状態(ひいては労働者=最終製品消費者層の負担が重い状態)が続くことになる。

ということがあるのではないだろうか。

なお、品質・機能の横並びについては早い段階で同等のものが並びやすい傾向があるためだと思われる。各社とも最低限を超える技術力を持ち、徹底したマーケティングを行っているという事だろうか。あるいは「日本企業の考えることはみんな一緒」というやつなのかも知れない。これはこれで謎だが。

さらに憶測で言うなら、需要の傾向が均一すぎるせいなのでもあるのではないだろうか。それ自体は、かつて、生産を効率化しやすくし、既製品(非オーダーメイド)を普及しやすくしてくれたものであり、日本経済の効率向上に並々ならぬ貢献をした性質なのだとは思う。しかし、品質を担保していた中の人の自己犠牲が期待できなくなってきて*3、かつてのサイクルが維持できなくなると、供給者の住み分けを難しくし、過当競争を引き起こしやすくする傾向が顕在化してきて、厄介な性質になってしまったのではないかと思う。


次に、政府による弱者救済が忌まれるのは「不正受給*4」が少なくない、と内心に照らして理解している人が多いからではないだろうか。この国は、建前的には「不正」である袖の下および私的なコネ、と見返り(公共事業、補助金、独立行政法人)で税金の使われ方が決まっている国だ、と。

そして税率を上げることに主に低所得者層が反対する理由も同様であろう。
所得再分配の役割を担っているはずの税金と公共事業が、ことあるごとに金持ち優遇と言われる改変を受けている、とニュースで言われ続けているのだから仕方がない。
また、毎日のように私腹を肥やすために税金を無駄に使わせていた企業・役人・政治家の名前がニュースに流れてもいる。

皮肉なことに、こういう癒着体質の末端にいる実務者のちょっとした配慮をこそ、税率を上げるのに反対する層は有難がって美談にしていたりする。そのせいで世論調査をすると矛盾しているとしか思えないような結果が出るのではないだろうか。*5


まとめとしては、日本では国内での自由競争による市場経済は、需要の性質からバランスできず、さりとて効果的な公的福祉も、民度が低いため期待できない、というところではないだろうか。結局おしきせの「自由競争とセーフティネット」はすぐに導入できるものではなく、過去の慣例とすり合わせつつ、望ましい体制を構築していくべきなのだろうと思う。

*1:どうも諸悪の根源はこれのような気はするが、部分的には鶏と卵の関係にある様にも思う。

*2:少なくとも一部の業界はそうだと断言できる。違うところの方が多ければそれは悪くない話なのだが、どうも他の業界においても外れているような気がしないのはなぜだろう。

*3:ブレークスルーを個人レベルで達成しづらいほどに技術が成熟してきた為だろう

*4:福祉政策にかこつけて我田引水をやって利益を上げることも含む

*5:まぁ、市場経済の帰結として生じてしまっている労働者の疲弊からは心温まる話なんて捻りだすこともできないのだから無理もないだろうが。

「サキヨミ」のオランダ型ワークシェアリング特集

フジテレビの「サキヨミ」でオランダでのワークシェアリングに関する特集をやっていたのが、
EU労働法政策雑記帳で過去読んだものと同様の内容だったことが印象に残ったのでエントリを起こしてみる。

受け売りではあるけれど、オランダの特色というのは、

  • 同一労働同一賃金(時給が同じ)
  • パートタイムの仕事の範囲が広い
  • 形態間の行き来が容易(パートタイム⇔フルタイム等)
  • フルタイムであっても労働時間の上限が明確(EUは全般的にそうみたい。残業代を払うとかそういう事ではない)
  • 雇用保険には形態を問わず加入させる義務あり
  • 派遣会社は雇い止めの後、次の派遣先を探す義務がある(常用型ということなのだろうか。詳細不明)

ということのようで、「サキヨミ」では、24時間稼働の工場でフルタイム(週5日)とパートタイム(週4日以下)と派遣労働者が混ざって働いている様子などが取り上げられていた。
それを見ていると、ワークシェアリングの話題で、よくオランダモデルを参考に、という意見をみかけるのもわかる気がした。徹底して合理的に制度が作られているように感じられる。

しかし、それだけならわざわざエントリを書こうとは思わないわけであって、冒頭で言った印象に残った、というのは、
この国で公共電波を使って放送されている映像が、合理的な制度を、偏向を感じさせずに伝えているということが新鮮だったからだ。とかくここ10年ほどでは、これって中間搾取業者以外損をしない合理的な話だよね、という内容は公共放送で目にしえなかったように思う。

テレビの惨状に目を覆うばかりの昨今にあって、(自分の採点基準の知識がWebからのものばかりというのは問題ではあるけど、)ケチをつけがたい内容を公共電波で放送してくれたスタッフを称賛するとともに、このことをもたらしたのが失墜した評価を地道に取り戻そうという動きの一環であることを切に願うばかりである。

ヒストリエ 5巻

ヒストリエ(5) (アフタヌーンKC)

ヒストリエ(5) (アフタヌーンKC)


当世最高と思ってる歴史モノのコミック「ヒストリエ」の第5巻
エウメネスがついにマケドニア入り。ここからが本編。
期待を高めてくれるかのように、この巻の迫力は凄い。

ソフトウェア開発技術者(旧情報一種)、漸く受かりました

今年10月に受けたIPAの旧情報一種資格、現ソフトウェア開発技術者の試験の結果発表がNet上で今日行われて、合格者の番号の一覧に自分の受験番号を確認しました。
初めて受けたのが2004年ぐらいだった気がするのだけど、とにかくアクシデントに見舞われまくっていたお陰で、5回ぐらい不合格判定をされて、6回目ぐらいの挑戦となる今回でやっと合格できました。このIPAの試験は来年から仕組みを変えるということで、旧情報一種となるソフ開も廃止される見込みになっており、ラストチャンスだったという訳です。
もともと、微妙に難易度高いくせに専門性が低く、問題の出題範囲が広範囲に渡る傾向があり、得意分野が出ればとても有利、そうでなければ厳しい、といった感じだったため専門性を証明しない資格だったのですが、まぁやりはじめた以上は攻略しておきたい目標でした(試験問題でいろいろ勉強させてもらった、という思い入れもあることでしたし)。
ということで、自分へのご褒美で、108UHを買いますー。<スイーツ(笑)風
合格証書を貰ったら、とりあえず部長に突きつけよう。その上で小一時間問い詰めてしまおう。